要らない物も欲しい物もたくさんあるけど、今一番欲しいのは
たった一つだけ、貴方に勝てる作戦。




「マナーも知らないクソガキが、こんな所に居るとはな…」

「また青筋立てて…血管切れてぽっくり逝っちまいますよ?」

まぁ俺的には嬉しいですがね。という俺の言葉を無視して
土方さんは勢い良く机をひっくり返した。
ドンガラガッシャーン!と、なんとも微妙な音を立てて皿達は床に落ちた。
否、落とされた。

「総悟ぉぉぉおおお!!このマヨネーズは使うなって言ってあっただろうが!」

無駄に瞳孔を開いて叫んでいる様は、きっと周りから見たら鬼のように見えているだろう。
…つまりは出会いたくない表情ナンバーワンって事。
だけど俺はこの表情に出会う事が好きだ。
だって…この表情をしている間は俺の事しか考えていないから。
更におちょくる台詞を言いながら、ひっくり返された机をさっさと元に戻す。
すると後ろから聞きなれた低い声が発せられた。

「トシ、大人気ないぞ?山崎に買いに行かせたから少しは抑えろ」

「近藤さん…そうですね」

また、だ。
土方さんはいつも近藤さんになだめられて俺から視線を外す。
それは、近藤さんに迷惑をかけたくないから。
いつまでも俺に構っていたら近藤さんとのやり取りが出来ないから。

(近藤さんばっかりだ)

近藤さんが嫌いなわけではない。
むしろ、好感度的に言えば一番いいのだ。
好・感・度・的に、は。
土方さんとの話が途切れ、自分でも分かる位にムッツリとした表情をしていたら
コンコン、と机を爪で叩いたような音が聞こえた。
視線だけ向けると、上司二人は局長室へ向かうのか立ち上がっていた。
そして土方さんが薄く笑いながら音を出さずに口を動かす。

「あ・と・で・な」

流れるような動作でその場を後にする土方さんから目が離せなかった。
この人には一生勝てない気がする、なんて俺にしては後ろ向きな考えが浮ぶ。

ああ、もう!



+大人になるにはまだ時間が足りなさすぎる+



 

遊離十題 05:大人になるにはまだ時間が足りなさすぎる
2007.4.3
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