コンビニの棚にいつもと違うお菓子を発見して後ろを振り向く。 「じゃあ、ついでにこれも」 「どこがついでか解りやすく説明しろ…」 二人で非番を取る筈だったのに、いっぺんに休まれたら困る!という近藤さんの申し出により、 今日は俺だけ非番だった。 つまりは、総悟が休みを取れなくて拗ねている…と言ったら当たりかもしれない。 普通なら俺が出る所だが、普段サボっていたツケで近藤さんに「総悟が出ろ」と言われたのだ。 「休んでたんだからこれくらい安いもんだろィ。」 冷ややかな目で俺を見ながら、「これも」と言って酒をぶち込む。 おい未成年だろ…と出そうになったのを飲み込む。 ここでそんな事を言ったらそれこそギャーギャー言われる。 こいつのおかげで大分我慢強くなったと思う…(不本意だ)。 「あ、晴れてやがる。」 金を払って店のドアを開けると、さっきまでの雨が嘘みたいに無くなっていた。 「目だな。」 「目?」 「台風の中心の事だ。」 「ふーん。」 店の傘立てから、傘を二つ抜いた。 「これ、帰りはお邪魔虫になりやしたね」 そう言いながら総悟はその二本を振り回した。 その仕種はまだまだ子供で、総悟に聞こえないように小さく笑った。 「帰るぞ」 これさいわいと今のうちに屯所まで急ごうとした。 でも、総悟は二本の傘を振り回したまま何かを考えている。 「土方さん。」 「何だ。」 「ちょいと遠回りしやせんか?」 そう言いながら、にひっと笑って小道にそれた。 その道は、河原へと続く道で。 (増水してて危ねぇんじゃ…) 案の定、河原の水はこれでもかと増水していた。 流れも早くて、濁っている。 なんでまたこんな日に限って河原へ来るのか。 はぁと溜息をついて空を見上げた。 さっきよりも大分雲が増えて、風も強くなってきた。 「おい、早く帰るぞ」 前を歩いていた総悟は、ちらっと後ろを振り返って直ぐにまた前を向いた。 「…もう少し・・・・に・・か・・・でぃ」 突然の雨と風でよく聞こえなかった。 総悟は前を向いたまま、「帰りやしょう」と呟いた。 それが何だったのかなんて、聞く必要はなかった。 後ろを振り向いた総悟の顔が笑っていたから。 …なんの事はない。 自分も同じ事を考えていた。 これってやっぱ自惚れ、か? らしくない事を考えながら雨脚の強まった土手を歩いた。 総悟はもう一度後ろを振り返り、ニヤーっと笑った。 そして、持っていた傘の一つを広げる。 「帰ったら宴会でぃ!」 「てめぇ……傘をさすなー!!!」 ばさばさばさばさ!! 「あー」 その時、なんともお約束な突風が吹いた。 さすなー!っという俺の言葉を無視してさしていた傘は、 無惨にも骨組みだけ残して飛んで行った。 「ほらみろ。」 「大丈夫ですぜ!今の傘、土方さんのだから。」 「んな!?」 ………やっぱりさっき違う事を考えていたかもしれない…。