「ぁ……っ」 総悟の艶のある声が埃っぽい書庫室に響いた。 右も左も本や資料でぎっしり詰まった棚が聳え立っている。 まだ太陽が活躍している時間帯に、隊服を着た男が二人。 誰もいない密室で、くっ付いてする事といえば一つ位だ。 薄暗い部屋の中でも肌の白さが目立つ。 それは二十にも満たない子供。しかも男。 こんな小さな少年に最近、自分でも抑えることの出来ない感情を抱いた。 曲がり形にも年を喰ってるし、何か位解る。 其れは、何とも言えない『モヤモヤ』としたもので、 少年に向けるべき物ではないと理解している。 理解と理性は違うものだ、と今更気づいた。 …遅かったんだよ。既に。 自分でも呆れる位の想い、気付かれてはならない感情。 そういう物が流れ出て、もう蓋なんか出来ない状態だ。 止まる所か溢れ出るばかり。 「……っ……はぁ…」 女とは全く別物の少年の声。 それでも、渦状の邪な感情が膨らむのが解る。 こりゃ末期だな…。 こいつの姿を誰にも見せたくない、声を聞かせたくない。 完璧な俺の『エゴイズム』 総悟の頬を綺麗な水が伝い、線になって落ちるのを舌で舐め取った。 何とも言えない位の妖艶さ。 穢れを教えたのは、自分。 『性欲』と言う名の支配の道具で。 今更後悔してるなんて、おかしな話だ。 後悔しないように動いた筈だったんだが。 相手の事なんて考えて無くて。 だからこそ言いたい。道徳、世間の目なんてクソくらえ。 そんな事知ったこっちゃない。 元々、神や仏は信じちゃいねぇし。 今更信じて貰えるなんて思ってないから、 眼を閉じたままで良いから、一言聞いててくれ。 「 」 きっと明日は雨。