孤高の君には似合わない






「ちょっ、落ち着け…」

捕まれた腕を解こうと動かしたら、ギシリと耳障りな音が体の下から聞こえる。
そういえば年代物のベットだった、と頭の隅で思った。

「落ち着いてる。それに、離したら何処に行くか分からないでしょ?」

ゆっくりと発した言葉は、雲雀の数少ない本音だと思う。
言われてみたら、最近仕事ばかりで一緒に居られなかった。
悪い…とは思っている。
だから、一刻も早く終わらせようと努力した。

「ごめん雲雀、俺…」

「言い訳は聞きたくないよ」

言い終わるのが早いか、雲雀の唇が俺のそれに触れたのが早いかは分からなかった。
嫉妬を剥き出しにしてるのも悪くない、なんて思った。
いつもより感情が読み取りやすい。

「雲雀…待っててくれて有難う」

「心配なんてするものじゃないね」

そう言って俺の事を抱きしめたから、表情は見れなかったけど
きっと苦笑いでもしてるんだろうと勝手に思う事にした。





だから、ワイシャツに染みた水分はきっと気のせい。




 

性悪的10題 6:否定
2007.1.4

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