「ちょっ、落ち着け…」 捕まれた腕を解こうと動かしたら、ギシリと耳障りな音が体の下から聞こえる。 そういえば年代物のベットだった、と頭の隅で思った。 「落ち着いてる。それに、離したら何処に行くか分からないでしょ?」 ゆっくりと発した言葉は、雲雀の数少ない本音だと思う。 言われてみたら、最近仕事ばかりで一緒に居られなかった。 悪い…とは思っている。 だから、一刻も早く終わらせようと努力した。 「ごめん雲雀、俺…」 「言い訳は聞きたくないよ」 言い終わるのが早いか、雲雀の唇が俺のそれに触れたのが早いかは分からなかった。 嫉妬を剥き出しにしてるのも悪くない、なんて思った。 いつもより感情が読み取りやすい。 「雲雀…待っててくれて有難う」 「心配なんてするものじゃないね」 そう言って俺の事を抱きしめたから、表情は見れなかったけど きっと苦笑いでもしてるんだろうと勝手に思う事にした。 だから、ワイシャツに染みた水分はきっと気のせい。