恐れているのは傷つく事か、付ける事か






神田君の心が僕に向いている事に気付いたのはいつ頃だろうか。
なんて、本当は覚えているのに忘れたフリをしてみる。
あれは、ラビが教団に来てすぐだった。

「ユウはコムイが好きなんさ」

ポーカーフェイスでそう告げたのは、ブックマンの後継ぎ。
きっとこの子は僕が神田君を好きなことを知っている。
だから

「でも渡さない」

なんて事を僕に言い放った。



あれから二年、僕はラビと神田君が夜に交える事を知っている。
どれだけ行為を重ねようと、神田君の視線が僕から離れる事は無かった。






手を伸ばせば届きそうなのに、伸ばす事が出来ないのは
やっぱり臆病だからだろうか。





今の関係を崩せる銃を持つ僕は
二年前のあの時から、愛しい人を人質に捕られたままで


セーフティすら外せていない。




 


性悪的10題 5:引き金
2007.1.16

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